「ホアロー収容所」フランス植民地時代の刑務所

鮮やかな黄色の建物が目を引く「ホアロー収容所」。その明るい色合いに反して、ベトナムの負の歴史が刻まれた場所の一つです。この場所で多くの人が拷問されたり、ときには処刑されたりしてきました。しかしながら、それらの苦難を乗り越えてきたベトナムの人々の強さや希望を感じる場所でもあります。

2024年3月、実際にベトナムの首都ハノイにあるホアロー収容所に行ってきました。この記事では、その時の様子を交えて、ホアロー収容所を紹介していきたいと思います。

ホアロー収容所の歴史

ホアロー収容所(ベトナム語: Nhà tù Hỏa Lò、英語: Hoa Lo Prison)は、19世紀末にフランス植民地政府によって建設されました。

この収容所は一般の犯罪者ではなく、植民地体制に反対するベトナム人活動家を収容する施設です。フランスが撤退する1954年まで多くのベトナム人たちが過酷な環境の中で拷問に苦しんだり、処刑されたりしました。

第二次世界大戦後、ベトナム戦争中にはアメリカ軍の捕虜を収容する施設として、今度はベトナム政府によって再び利用されました。アメリカ人捕虜たちは、この収容所を「ハノイ・ヒルトン」と皮肉を込めて呼んでいました。

現在、ホアロー収容所の一部が博物館として保存されており、一般に公開されています。

ホアロー収容所へ行ってみた

2024年3月、ホアロー収容所に久しぶりに行ってきました。

ホアロー収容所へのアクセス

ホアロー収容所はホアンキエム湖の南側、ホアロー(Hoả Lò)通りにあります。旧市街ではありませんが、徒歩でも十分観光できるエリアです。

ハノイ大教会からは徒歩で10分程度なので、教会を観光した後に、続けてホアロー収容所に行ってみるのもいいかもしれません。

しかし、ドンスアン市場など北側のエリアにいると、徒歩で30分弱かかってしまいます。ホアロー収容所へのアクセスは、自分がいる位置によって、徒歩で行くか、タクシーやグラブ(配車アプリ)で行くか、選択するといいと思います。

ホアロー収容所の近くまで来ると、黄色い塀が見え、すぐに場所がわかると思いますが、大きなビル「ハノイタワー」も目印になります。

ハノイタワーはホアロー収容所を取り壊して建てられました。残った部分が博物館となっています。

チケット購入

ホアロー通りを黄色い塀に沿いに、入口とチケット売り場があります。チケットは2024年現在、5万ドン(約300円)です。以前より、料金が値上げされています。

市内観光ツアーの大型バスも来ていました。全体的に、ツアー客、個人客ともに、ヨーロッパ系の人が多めです。

入口から中へ入ってみましょう。入口に書かれているMaison Centrale(メゾンセントラル)”は、ホアロー収容所のフランス語名です。

音声ガイドを借りる

中に入ると、音声ガイドが借りられます。

音声ガイドは1台10万ドン(約600円)するのですが、日本語も対応していて、展示への理解がより深まりますよ。

こんな人物が収容されていて、こんな出来事があったと、具体的なストーリーとともに展示を解説してくれるので、当時の様子をよりリアルにイメージすることができます。

館内の展示

展示はホアロー村から始まります。

フランス植民地政府は、陶磁器の村だったホアロー村の人々を退去させ、刑務所や裁判所を建て、植民地政府への抵抗運動を弾圧する拠点としました。

現在、残っている収容所は全体の一部であることを模型を見て確認。取り壊されたところに、ハノイタワーが建っています。

フランスからも建築資材が輸入され、堅固で大規模な刑務所が建設されました。

ホアロー収容所の正門。頑丈そうで、ここからの脱獄は難しそう。

当時、使われていた食器や衣服がたくさん展示されています。

人形を使った展示が当時の様子を想像させます。

収容された活動家たちは、足枷をされ、もちろん監視もあったわけですが、士気を維持し、革命理論を学び続けました。

囚人たちの心の支えになったバンの木。バンの木で箸や楽器を作ったり、葉を薬にしたりしていたそうです。

脱獄を試みる人も。

 

女性の囚人とその子どもたちも収容されていました。

ギロチン台は実際に使用されていたものです。

独房もリアルに再現されていました。扉の小窓から、中をのぞけるようになっています。

ギロチンや独房の他にも、拷問の道具の展示などがあり、先へ進めば進むほど、何とも言えない重たい気分になってきます。

展示室の外に出ると、慰霊碑がありました。悲しみを表現しているのかと思いきや、不屈の精神を表現しているのだとか。

拝んでいる人がいたので、私も思わず手を合わせてしまいました。

再び建物に入ると、アメリカ人を捕虜していた頃の展示があります。撃墜された多くの米軍のパイロットたちがホアロー収容所に収容されました。

オバマ大統領が当選したときに敗れた共和党の候補者、故ジョン・マケイン氏も収容されていました。

前半の展示とは打って変わって、ベトナム政府はアメリカ人捕虜を人道的に扱ったという内容の展示になっています。

ただ、これはベトナム側の視点。1987年のアメリカ映画『ハノイ・ヒルトン』(THE Hanoi Hilton)では、ベトナム側の拷問などが描かれています。

2階の展示もありました。

2階は資料とともに、収容されていた活動家たちの人物紹介が多く展示してありました。

音声ガイドを聞きながら展示を見て回ると、2時間30分ほどかかってしまいました。以前、来たときは音声ガイドがなかったので、滞在時間は1時間か1時間30分程度だったと思います。

お土産屋も

展示の途中にお土産屋さんもありました。お土産という気分になかなかなれないかもしれませんが、充実の品ぞろえです。時間がない人はここでお土産を購入してもいいかもしれません。

ホアロー収容所をおすすめする理由

ホアロー収容所は、ベトナムのことをもっと深く知りたいという人に、ぜひ足を運んでほしい場所です。

負の遺産を展示するような場所は、暗く悲しい気持ちになるので、海外旅行中に訪れたくないと考える人も少なくないかと思います。確かにその通りで、ホアロー収容所を実際に訪れてみると重たい気持ちになってしまいます。

しかし、ホアロー収容所はその悲惨さだけを表してはいません。収容された当時の人々が、何とか生き延びてベトナムの独立や自由を実現としようとしていた姿を垣間見ることができる場所でもあるのです。

歴史を学ぶだけでなく、ベトナム人の力強さを感じられるという意味で、ホアロー収容所はおすすめの観光スポットです。

入場料・営業時間・住所

☆Di tích Nhà tù Hỏa Lò☆
住所:1P. Hoả Lò, Trần Hưng Đạo, Hoàn Kiếm(ホアンキエム湖北側から徒歩16分)

入場料:50,000VND(2024年3月現在)

営業時間:8:00-17:00(無休)


Googleマップ

ezstayhanoi001@gmail.com

主に参考にしたページ

Giới thiệu Di tích Lịch sử Nhà tù Hỏa Lò(ホアロー収容所公式HP)

知ろうベトナム!ホアロー刑務所